1月15日 古本市

1/15 AM10:00

今日はどんより曇り空。

午後から雨が降るらしいです。

明日から1週間、図書館で古本市が開かれます。

新しい本を入れるために大掃除をしていらなくなった本を古本市に出すのです。

しょうさんもお弁当を持って、手伝いに行くことになっています。

 

「白樺さん、夢中になると食べることも忘れて没頭しちゃうからね。

しっかりと食べてもらわなくちゃ。」

しょうさんは注文を受けた6人分のお弁当を作っています。

 

AM11:30

「こんにちはー。」

本の山の中から白樺さんが手を振ります。

「ここ、ここ。ありがとう、しょうさん。

すごいことになってるでしょ。」

「うん、すごいことになってる。まず、何すればいい?」

「そうね。じゃ、机にこの赤い紙と黄色い紙を敷いて。

赤い紙の机に古本市に出す本、黄色い紙の机に図書館に残す本を

分けて積んでって。」

「了解。」

 

しょうさんは本の移動を始めました。

『星空カフェのレシピ』 うわあ、おいしそう。

『季節のスワッグ』 これ、あやさんが好きそう。

『幸せになるための10の法則』 私、充分に幸せだからねえ。

つい、パラパラとめくりながら見てしまうので、

作業はなかなか進みません。

 

れいこさんと空光くんもやってきました。

「お疲れ様。手伝いに来たよ。」

「ありがとう。しょうさんの方を手伝ってもらえる?」

れいこさんと空光くんも、やっぱりぱらぱら。

仕分けはなかなか進みません。

 

なべさんとぎんさんが来ました。

「遅くなってごめん。なべさんのところでコーヒー飲んでたら

ゆっくりしすぎちゃったよ。」

二人が加わって五人になったけれど

やっぱりぱらぱら。なかなかはかどりません。

 

「こっちの机にさ、青い紙を敷いて、お取り置き用の場所にしよう。」

空光くんが言います。

「それはいい考えだ。」

みんな、いそいそと青い紙の机に、自分のお気に入りの本を置きにいきます。

 

「あ、そうそう。お弁当作ってきたから、

みんな都合のいい時に食べてね。」

「僕もコーヒー入れてきたから飲んでね。」

なべさんが言います。

 

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ロールサンド

 ハムチーズ・卵サラダ・ツナ・ウインナーキャベツ

 ピーナッツクリームとブルーベリージャム

いちごミルク寒天

コーヒー

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図書館にコーヒーのいい香りがたちこめています。

みんな無言で、食べたり、飲んだり、作業をしたり

穏やかな時間が過ぎていきます。

 

空光くんが言います。

「ねえ、白樺さん。

古本市に出す本じゃなくてもいいんだけど、

龍?ドラゴン?的な本てある?」

「うん、あると思うよ。」

「実はさ、うちの神社、九龍神社っていうんだけど・・・」

「うん、うん。知ってる。」

「どうやら、この村に龍の宝珠があるらしいんだよ。」

「なんと。」

「九龍神社にあるのは、白い宝珠だけど、

九つあるうちの一つに過ぎない。

後の八つはまだ、どこかにあると思うんだ。」

「なんか、ロマンだね。」

「手伝うよ。一緒に探してみよう。」

 

みんなの作業が早くなってきました。

雨がぽつぽつと降り始めました。

 

「ねえ、これは?『ドラゴンの飼い方』」

「うーん、おもしろそうだけど、龍を飼うのって難しそうだよね。」

「こんなのあった。『九龍城砦』」

「それは、たぶんよその国に実際にあったものだと思う・・・」

夜も近くなり、暗くなってきました。

古本市の準備も整い、いつものきれいな図書館になりました。

「みんな、ありがとう。

龍の本、図書館の蔵書にあるかどうか、調べておくから。」

「うん、ありがとう。」

 

れいこさんが目をきらきらさせてたずねます。

「宝珠って、白の他に色があるの?白ばっか?」

「うん。僕の知っている限りでは9色。

白、黒、赤、青、黄、緑、桜、銀、金 らしい。

9匹の龍が守っているんだって。」

「なんか、すごいね。

この村のどこかにあるかもなんて、素敵すぎる。」

不思議大好きのれいこさんはとても楽しそうです。

 

「ねえ、この本ちょっと見て。」

ぎんさんが一冊の本を持って来ました。

『ミラクル マジカル 数え話

ー あなたも謎解きに挑戦 ー』

「ここにかいてあるんだけど・・・」

ぎんさんは、ページを開いてみんなに見せました。

 

ひとつ 光が差し込んで、世界は明るくなりました。

光は白い玉となり、社に守られ神となりました。

ふたつに世界は引き裂かれ、そこから水が溢れ出します。

世界は水に満たされました。

水は青い玉となり、深く沈んでいきました。

みっつ 水から山が出て、世界は海と大地に分かれます。

大地は黄色い玉となり、山に登って深い眠りにつきました。

しいで静かな海の上。少しずつ揺れて揺れて波ができました。

波は風をおこします。

風は緑の玉となり、緑の山の木々たちと静かに遊んで過ごします。

いつつ いつしか光が集まって、風がそっと通ります。

そこから火が生まれ、炎となりました。

炎は赤い玉となり、海と大地の狭間で呼ばれる時を待っています。

むっつ 川の向こう岸。木々の蕾がふくらんで、

暖かい日とやさしい風に守られて、そっと薄桃色の花が咲きました。

花は桜色の玉となり、花の木の下で、時がくるのを待っています。

ななつめの日、光はふと振り返り、そこに影を見つけます。

影は大きく広がって、世界は闇に包まれました。

光と闇は約束をして、半分ずつ世界に現れることにしました。

闇は黒い玉となり、世界のどこかに隠れています。

やっつめの闇の時、空から星が降ってきました。

星は大地で冷たくなって、キラキラ輝く氷になります。

氷は銀の玉となり、空を見上げて仲間がくるのを待っています。

ここのつめの日は、光の強い日。

光に照らされて銀の玉が光ります。その光は空に届き、大粒の雨が降ってきます。

稲妻が光り、大きな音を立てて雷が落ちてきました。

雷は金の玉となり、銀の玉と一緒に空を見守っています。

とおで 遠くの空から九匹の龍が降りてきて

九つの玉を守ります。

 

「これって・・・

玉の色、さっきの空光くんの話とぴったりあってるよね。」

「白樺さん、この本、今晩貸して。

明日持ってくる。」

「いつでもいいよ。」

 

「みんなのお取り置きの本もそのままにしておくから

都合のいい時に取りにきてね。」

「おつかれさまでした。」

 

すっかり暗くなってお腹もすいてきました。

「きょうさんに、なんか作ってもらって、今日の話しようっと。」

しょうさんは、お店に帰っていきます。