11月14日 お正月まで待てない!
11/14 AM10:00
しょうさんの趣味は仕込みです。
2月には味噌
春は八重桜の塩漬け、アンチョビやこけもものジャム
6月は大忙しで、梅干し、梅酒、らっきょう、実山椒
夏になると、うにの塩漬けやベリーのジャム
秋はいくらや銀杏、栗の甘煮
冬になると白菜漬けやたくあん、ママレードや金柑
一年中何かを仕込んでいます。
先月仕込んだいくらはお正月用です。
でも、味見をせずに冷凍してしまったので、とても気になっています。
「皮は固くないかしら。味はどうかしら。」
一度考え始めると、もうどうしようもなくなって
冷凍からいくらを取り出しました。
「今年は、たくさん仕込んだから大丈夫。ちょっとだけ食べてみよう。
お昼頃には食べ頃ね。
一人で食べるのも何だから、あやさんとれいこさんにも連絡しようっと。」
AM11:00
カランコロン・・・
「いらっしゃい。」
入ってきたのは、美容院のアサヒさんです。
「今日は、北風が強いよ。
こんな風の強い日は美容院に来る人が少ないからさ、
お店早じまいできちゃったよ。
なんだか今日はいくらがあるってきいてさ。」
「ん?」
カランコロン・・・
「しょうさん、いくらがあるんだって?」
村のおじさん3人組です。ヤマダさん、桜井さん、キヨシさんがそろって来ました。
「んん?」
カランコロン・・・
次々と、村の人が集まってきました。
「しょうさん、お誘いありがとう。
なんか賑やかだね。」
「あやさーん、みんな、いくら食べに来ちゃったよ。」
「あららら。」
「こんにちはー。
いくらが食べられるなんて幸せー。
喜びのお裾分けでいろんな人に言いふらしちゃった。ふふ。」
「れいこさん!呑気すぎ!
追加でいくら解凍しなくちゃならなくなっちゃったよ。」
カランコロン・・・
きょうさんとトキオくんが来ました。
「きょうさんまで来たー。」
「水くさいなあ、しょうさん。
いくら出すなら、ちゃんと連絡してくれなきゃ。
れいこさんに聞いて、あわてて来ちゃったよ。」
「いくら・・・なくなっちゃうかも。
もう、れいこさんのおしゃべり!」
トキオくんが笑いながら言います。
「大丈夫、今年はまだ筋子があるよ。
今度、多めに届けるから、また仕込んでよ。」
しょうさんは、ため息をひとつついて言いました。
「よーし、こうなったら食べ尽くせ!
いくら祭りだ。
とりあえず、これ食べて待ってて。」
しょうさんは、とりあえず盆をみんなに配りました。
「これは、これは。」
「見てよ、この銀杏。大粒でぷりぷりだよ。」
「このうずらは、しょうさんお得意の2分40秒ゆでの半熟卵だね。」
「鮭の酒浸しなんて、もうしょうさん、憎いねえ。」
「こんなのがあったら・・・ねぇ。」
「ねぇ。祭りだものねぇ。」
「まだ、暗くなってないけど・・・ねぇ。」
「こんなのあるよ。」
きょうさんが、お店の奥から出してきました。
「じゃじゃーん。この日本酒、なんと鮭専用なんです。」
「おおおおおお。」
盛り上がりはとまりません。
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とりあえず盆
・銀杏の塩炒り
・うずら串
・鮭の酒浸し
鮭専用日本酒 純米サーモンデシュ
プチいくら丼
せりの酢の物
山芋の磯辺揚げ
海苔汁
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「しょうさん、今年のいくら最高!」
「れいこさんの広告塔のせいで、すごいことになっちゃったね。」
「お正月の予行練習?」
「今日はもう、私たちも飲んじゃおう。」
「このお酒、すんごくおいしいでしゅ。」
秋の午後、木枯らし1号の中
村の小さなお祭りになりました。