8月7日 最初の一歩

毎日、暑い日が続いています。

6月から村のみんなが集まって作り始めたツリーハウスも

今日中には仕上げなければなりません。

しょうさんは、お昼のお弁当を毎日届けています。

 

8/7 AM10:00

「いよいよ、今日でツリーハウスも完成だ。」

しょうさんは、今日のお弁当を作り始めました。

 

カランコロン・・・

「しょうさん、おはよう。」入ってきたのはぎんさんです。

「おはよう、ぎんさん。今日もありがとう。

今、用意しているから冷たい麦茶でも飲んで待ってて。」

ぎんさんは、お弁当をツリーハウスに届けるのを手伝ってくれています。

「どうやら、今日中に出来上がりそうだね。」

「そうね。明日の花火大会に間に合いそう。」

8月8日、午後8時

ベガ川の海につながる場所で打ち上げ花火が、毎年打ち上げられます。

いつもは砂浜に各自で椅子持参で観るのですが

今年はツリーハウスから観ることができます。

茶店ジャニスの横に、大きな樫の木があって

そこにツリーハウスを作っています。

 

「楽しみですね。」

「ほんと楽しみ。」

 

カランコロン・・・

「おはよう・・・」何となく元気なく入ってきたのはそんぽさんです。

「どうした、そんぽさん。夏バテか?」

「僕さ・・・。いつもそうなんだ。」

「どうしたの?」

「最初はさ、よし、やるぞって、やる気もあるし出来るつもりでいるんだ。

でも、いつの間にか後回しにしちゃって・・・結局、何もできてない。」

そんぽさんは下を向いてぼそぼそと話します。

「仕方ないよ。そんぽさん、とても忙しいんだから。

手紙や荷物の配達、貯金とか保険の郵便局の仕事の他にも、

掲示板や村の放送とか。

いつも動き回っていて大変だなあって思っているよ。」

「ありがとう、しょうさん。

でも、こんな風に自分ってだめだなあって思っちゃう時があるんだ。」

 

「わかる。」

カウンターで麦茶を飲んでいたぎんさんが言います。

「わかるよ、そんぽさん。僕だってそうなんだ。」

「そう?ぎんさんもそんなことあるの?」

「あるさ。頭ではやらなくちゃって思っていても、

なかなか行動できなくてさ。」

「そうなんだ。

頭のすみっこで、いつももやもやが残っているんだ。」

「私もそうだよ。裏の倉庫に梅酒とか仕込んだものがごちゃごちゃになってて、

きょうさんのお酒もたくさんごちゃごちゃになってて

いつか片づけなくちゃって思ってるんだけど

また、今度でいいかって・・・結局、そのまま。」

「僕だけじゃないんだ。」

「そんぽさんは、何をやらなくちゃ、なの?」

「この村の地図。村長のたくろうさんに頼まれてて

メモみたいなものは作ったんだけど、きちんとしたの作ろうと

思い続けて、もう何ヶ月もたっちゃって・・・」

「いろいろと任せちゃってごめんね。」

「そんなことないよ。本当に自分がやりたいことなんだ。」

 

「最初の一歩」

ぎんさんがつぶやきます。

「最初の一歩が踏み出せれば、きっと何かが始まると思うんだ。」

「そうかな・・・」

「ツリーハウスも最初はただの大きな木だったけど

みんなの最初の一歩が集まって、少しずつ形になっていった。

そんぽさん、それ手伝うよ。

最初の一歩を一緒に踏み出してみようよ。」

「ぎんさん。ありがとう。

なんだか・・・なんだか・・・一人じゃないって思うと

エネルギーが少しずつチャージされていく気分だ。」

「とりあえず、週に1回ここに集まって進めていこうよ。」

「いいですね。私も参加させて。」しょうさんも言います。

「地図作成委員会。ですね。」ぎんさんも笑って言います。

 

「お弁当できました。」

「僕も運ぶの手伝うよ。」

そんぽさんは、すっかり元気になって、はりきっています。

 

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ホットドッグ サルサソース

れんこんチップス

ツナマカロニサラダ カレー風味

アスパラガスの冷たいポタージュ

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「おつかれさまです。お弁当のお届けでーす。」

「しょうさん、毎日ありがとう。

見てよ、あと手すりをつければ完成だよ。」

工務店のヤマダさんが得意そうに言います。

「グッドタイミング。今ちょうど冷たいミントティーを持ってきたんだ。」

茶葉の店のあやさんが言います。

「みて、みて、このクッション。

テーラーの桜井さんに端布をもらったから、いっぱい作ってきたの。」

PCショップのれいこさんが、クッションに埋もれて声をかけてきます。

 

みんなの最初の一歩で始まったツリーハウス。

ゴールも、もうすぐです。