7月12日 天気雨

7/12 PM5:00

 

カランコロン・・・

「しょうさん、灯籠持ってきたよ。

お店の前に置いといて。」

入ってきたのは、れいこさんです。

「ありがとう。たくさん用意してくれて、大変だったね。

これから配りに行くんでしょ。手伝うよ。」

 

杉の木村では、今日から路灯籠がはじまります。

海岸近くの中央通り、村のお店の前、神社への階段に

灯籠をおいて火を灯します。

日が沈むととてもきれいです。

今日から7月18日の七日間灯して

最後の日には、ベガ川で灯籠を流します。

 

灯籠は竹と和紙で作ります。

れいこさんが作る灯籠はとてもきれいで

ここ何年かは、すべての灯籠をれいこさんが作るようになりました。

 

「ありがとう。

リヤカーいっぱいの灯籠、日が沈むまでに配り終えるかどうか

心配だった。」

しょうさんは、灯籠に火を灯してお店の前に置きました。

「きれい。」

「今年は、天の川をイメージして作ってみたんだ。」

「毎年、楽しみなんだ。」

「じゃあ、神社の方から置いていくから、適当に来て。」

「わかった。すぐに追いつくよ。」

 

神社の階段に置き、そのまままっすぐ進んで

アルタイル川の方へ向かう時に、雨がパラパラと降ってきました。

「あら、不思議。晴れてるのに雨が降ってきた。」

狐の嫁入りだ。」

「なに、それ。」

「天気雨のこと。」

「へー、おもしろいね。れいこさん見たことある?」

「ないない。ただの言い伝えみたいなものよ。」

 

その時、アルタイル川の向こう岸、葦の群生の向こうに灯りが見えました。

「あれ、川向こうにも灯籠、置いたの?」

「ううん、置いてない。」

「だって、ほら、向こう岸に。」

青白い灯りがゆらめいています。

「ほんとだ。ホタル?じゃないよね。」

シャーン・・・シャーン・・・

どこかで小さな鈴の音が聞こえてきます。

「ああ、これが狐の嫁入りなのかもねえ。

れいこさん、いいことに出逢えたね。」

「うん、見たいけど、そっとしといてあげよう。」

二人は中央通りの方へ進んで、灯籠を配り続けました。

雨はいつの間にかやんでいます。

 

「ただいまー。」

「おかえり。灯籠配りおつかれさま。

これ、食べてって。」

きょうさんが食事の膳を用意をしてくれていました。

 

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  八寸

  ・蒸しあわび 枝豆ゼリー寄せ

  ・みょうがの甘酢漬け

  ・鴨ロース アスパラ巻

  鯛の塩麹焼き

  茶碗蒸し(ささみ・しめじ)

  かぼちゃの鶏そぼろあん

  きつね丼(焼き油揚げ生姜醤油)

  お漬物

  紅白まんじゅう(こしあん・みそあん)

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「きょうさん、すごーい。」

「なんと、タイムリーなメニュー!」

れいこさん、今日はお祝いだからお酒飲んじゃおう。」

「いいね、お祝いしちゃおう。」

「なんだかわかんないけど、じゃあこれは僕からの差し入れで。

京都の純米吟醸。瓶が素敵でつい買っちゃったんだ。」

 

玉乃光酒造 純米吟醸

青まねきつね

 

「きょうさん、すごい。千里眼。」

 

日が沈んで、灯籠の灯りがあちこちで揺らめいています。