1月7日 七草

1/7 PM6:00

せり なずな ごぎょう はこべら ほとけのざ

すずな すずしろ 春の七草

 

きょうさんは目の前に広げた七草を見ながら言いました。

「さて、こいつらをどうしようか。」

せりは、よく食べる食材。すずなは蕪、すずしろは大根。

でも他の奴らは、この日にしか登場しない食材。

なずなはぺんぺん草の赤ちゃんだし、ハコベラに至ってはインコのご飯。

要するに道に群生する野草たちだ。

お前たちは、どう食べて欲しい?

ぶつぶつとつぶやいています。

どうやら、当たり前に食べられている『七草粥』に疑問を持っているようです。

 

お粥は嫌いじゃない。いや、むしろ好きだ。

でも、こいつらを入れると正体不明の緑の塊になってしまって、

誰が誰だかわからなくなってしまう。

 

しびれを切らしたしょうさんが言います。

「ねえ、きょうさん。七草たちの答えは返ってきましたか?

私、なんだかお腹すいてきちゃったよ。」

「しばし、待たれよ。

今、こいつらも悩んでいるところなんだ。」

 

たくろうさんが七草を届けてくれたので

今日は、きょうさんが晩ごはんを作ってくれることになりました。

 

「そもそも、今日は人日の節句なんだ。

他の節句の時は、立派な御膳が用意されるのに

なぜ、今日は『七草粥』だけで済まされてしまうんだ

と、彼らは言っている。」

「はいはい。じっくり話し合って決めてください。

おとなしく待ってるよ。」

 

「とりあえず、これでも飲んで待ってて。」

そう言って松前漬けと日本酒を出してくれました。

「しょうさんにぴったりのお酒だよ。

お正月用にとっておいたんだ。

キリッと冷やしてあるから。」

 

東洋美人 純米吟醸 亀の尾

 

「あら美人だなんて。きょうさんたらお上手。」

思わず、にっこり顔になって、しょうさんはお猪口を選び始めました。

「やっぱり冷酒はガラスのお猪口がいいかしら・・・」

 

カランコロン・・・

h入ってきたのは、たくろうさんとあきこさんです。

「お正月気分もやっと抜けて、久しぶりに働いたら

なんだか疲れちゃってね。」

「どうぞどうぞ。宴は始まったばかりですよ。」

「このお酒、すんごくおいしいの。

雑味がなくてものすごくすっきり。

なんだか浄化されていく感じよ。」

「しょうさんが言うなら間違いないね。」

 

「こいつらの声が聞こえたよ。

今から用意するから、ゆっくり飲んで待ってて。

あ、僕も一杯。」

 

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とりあえず盆

 ・松前漬

 ・金柑の砂糖漬け

 ・柚子釜なます

あんかけ粥

七草としらすかき揚

瓢亭卵

わかさぎの佃煮

すぐき漬け

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かき揚げときたか。

確かに、お粥にまみれるよりか存在感があるね。」

「うん、おいしい。」

「七草のちょっとほろ苦い感じがよくわかるね。」

きょうさんも一緒に4人でテーブルを囲んで

そろそろお酒もなくなってきそうです。

 

ちょっと赤い顔になったしょうさんが言います。

「たくろうさんと、あきこさんてさ。

何気に仲良しだよね。いつも一緒にいるし。」

「いや、普通だよ。」

「しょうさんたら、酔っ払ってる?」

笑いながらあきこさんが言います。

「僕も思っていたんですよ。

仲いいですよ、二人。」

「きょうさんも、酔っ払ってるー。」

あきこさんはケラケラ笑っています。

 

「たくちゃん、私たち仲良しだってー。」

「あきちゃん、僕たちって仲良しなんだね。」

「ん?」

「え?」

「たくちゃん?」

「あきちゃん?」

 

「私たち、一緒に暮らしているんだ。

大げさなことじゃなくてさ、

ただ、お互いに一人でいるより二人の方が楽しいかなって。」

「そうなのよ。

ただ二人で時を重ねることを大事にしていきたくてね。」

「なんてこった」

「びっくりだ」

 

「なんだか乾杯したくなった。」

「しよう、しよう。」

 

新しい年に

杉の木村に

素敵な二人に

みんなが幸せになれますように・・・

 

乾杯!