11月11日 地図2

杉の木村

11/11 PM6:00

カランコロン・・・

「こんばんは。杉の木村の地図を配りにきました。」

「ご苦労さま。」

「書き直そうと思って、何日かやってみたんだけど、

どうにもこうにも絵が下手くそなもんで。

結局、この前、空光くんが仕上げてくれたものをコピーとっただけなんだ。」

「場所がわかればいいんだから、充分じゃない?」

「うーん。そうかなあ。」

そんぽさんは少し不服そうです。

 

「もし、良かったら、私、地図を作りましょうか。」

隅のテーブル席に座っていたぎんさんが言いました。

「そうか!ぎんさんは、画家だもんね。

きっと、すんばらしいものが出来るよ。」

「いや、それほどでもないけど・・・

この村に来てね、あまりにもいい所なんで、あちこちデッサンして回ってるんだ。

だいたいの場所もわかってきたし。

急がないなら作ってみるよ。」

「それは、うれしい。是非お願いします。」

「うん、とりあえず、この地図はこれからみんなに配ってくるよ。

訂正があるかもしれないしね。

それじゃ、いってきまーす。」

そんぽさんは、忙しそうに出て行きました。」

 

「ぎんさん、ありがとうございます。

新しい家の住み心地はいかがですか。」

「すばらしいよ。みんなが用意してくれて、

とても気持ちよく暮らしているよ。

1階のギャラリーも、絵を飾るだけじゃなくて、お茶を飲める場所もあって

それは、それは素敵なんだ。

兄さんなんて、気に入って毎日お茶を飲みにくるんだよ。」

「それは良かった。」

「特に素敵なのは、家の脇にあるエンジェルトランペットなんだ。

ここに来たときにはまだ花が咲いていてね。

あまりにもかわいくて、何枚も絵を描いたよ。

あの薄ピンクの花を、天使がトランペットにして吹いている姿を想像したら

たまらなくってね。」

楽しそうにぎんさんが話します。

「今度、お茶を飲みに画廊に行くから、

エンジェルトランペットの絵、見せてくださいね。」

「うん、待ってるよ。」

 

「なんだか、ちょっとお腹すいてきちゃったな。

軽い食事、頼んでいいかな。」

「もちろん。何かリクエストありますか。

ここは、お客様のいいなりの食堂です。」

「素敵だね。でも、きょうさんに任せるよ。

何を作ってもらえるのかも楽しみだから。」

「わかりました。ちょっと、待っててね。」

 

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焼きうどん

味噌ミルクスープ(きのことベーコン)

さつまいもきんとん(マロングラッセ入り)

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「お待たせしました。」

「おいしそうだ。鰹節が踊ってるよ。

きんとんにポッ☆ーが立ってるよ。」

「さだはるさんが、マロングラッセを作って試食を頼まれててね。

きんとんの中に入れてみたから、甘党のぎんさんも感想きかせて。」

「マロングラッセ!!大好物だよ。」

「今年の栗は大粒で、とてもいい出来だって言ってたよ。

さだはるさんの果樹園は、本当にたくさんの果物があるんですよ。」

「知ってる、知ってる。

いつ通っても果樹園の手入れをしている。

この村の人たちはみんな、人にも物にも優しいよね。」

「そうですね。

助け合って、一緒に笑ったり泣いたりしてすごしているかな。」

「うん、いい村だね。」

 

ぎんさんは、ゆっくりとおいしそうに晩ごはんを食べました。

「おいしかった。ここでご飯を食べると、とても温かい気持ちになるよ。」

「ありがとうございます。

いつでも来てください。」

 

「ところで、きょうさん。

今日、11月11日は『ポッ☆ーの日』だって知ってたの?

僕、ポッ☆ー大好きなんだ。

実はこれからポッ☆ー大会をする予定なんだよ。11月11日だからね。」

 

ぎんさんは楽しそうに帰って行きました。

見送ったきょうさんは、そっとつぶやきます。

「11月11日は、ちんあなごの日だよ。」