6月24日 ベントラー

6/24 PM1:00

カランコロン・・・

「こんにちは。

昨日はごちそうさま。楽しかったね。」

入ってきたのは、テーラーの桜井さんです。

「ねえ、しょうさん。今日は何の日か知ってる?」

「今日ですか・・・。何だろう。」

「実はね、今日は『UFOの日』なんですよ。」

「そんな日があるんですね。」

 

この村には、三人の不思議さんがいます。

一人目は、PCショップのれいこさん

二人目は、BAR Kingのリーさん。

そして三人目が、この桜井さんです。

この三人は、村の不思議イベントには、もれなく参加しているようです。

 

「それで、今日は何かUFOのイベントでもあるんですか?」

「あたり。

天文台のもとおさんが、今日、UFOを呼び出して宇宙人と交信しようって言い出して。

今朝からみんなで準備で大忙しなんだ。」

「またまた、楽しそうなイベントですね。」

「夕方の5時頃から、浜の見晴台のところでやるんだ。

晩ごはんのデリバリーって頼める?」

「もちろんです。5時にはきょうさんも来るから

二人でお届けしますよ。」

「よかった。お願いします。

参加者は5人の予定です。

よかったら、しょうさん、きょうさんも参加してね。」

 

さて、何を作ろうかな。

 

PM5:30

「きょうさん、そろそろ届けに行こうか。」

「うん、そうだね。」

「たくさん作り過ぎちゃった。ちょっと重い。」

「ねえ、しょうさん、今日のメニューなんだけどさ。

『UFOを呼び出す集まり』のごはんに、焼きそばって・・・」

「イメージが先行しちゃって、他のもの考えられなくなっちゃったのよ。」

「それに、たこって。マンガに出てくる宇宙人を連想しちゃうし。

たこ、食べちゃうし・・・」

「だから、イメージが先走っちゃったんだって。」

きょうさんは笑いながらいいました。

「極めつけは、UFOどら焼きだよね。

しょうさんのセンス、最高。」

 

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  ・ソース焼きそば

  ・たこのから揚げ

  ・スティックきゅうり

  ・ポテトサラダ

  ・UFOどらやき

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浜につくと、もう始まっていました。

みんな白い布を頭からかぶって、円陣を組んで叫んでいます。

ベントラー、ベントラー」

 

「何のおまじない?」

きょうさんが不思議そうに聞きます。

「UFOを呼び寄せる言葉なんだって。

で、白い布は、宇宙人が会いに来たときにびっくりさせないように

かぶっているんだって。」

しょうさんは、昼間、桜井さんからきいたことを

得意そうに話しています。

 

ふたりが円陣の様子をながめていると

ひとりの子どもが抜け出してこちらに走ってきました。

「すごく、いいにおい!」

「食べる?」

「うん。」

紙皿に、焼きそばを入れて渡しました。

「おいしい!これ何ていうの?」

「え・・・。これはね、焼きそばっていうの。

たこちゃんウインナー入りだよ。」

「こんなにおいしいもの、初めて食べたよ。」

あっという間に食べてしまって、空のお皿をみつめています。

「おかわりする?」

「いいの?

あのね、これ、船に持って帰ってみんなにも食べさせてあげたいの。」

「いいよ。今、用意するね。」

 

きょうさんと、しょうさんはお持ち帰り用に詰め始めました。

「この子、誰だかわからないけど、

トキオくんの知り合いかもね。」

「うん、きっとトキオくんのシリウス号に乗ってきたんだよ。」

「いっぱい作っておいてよかった。」

 

「はい、どうぞ。

たくさん入れておいたからね。」

「ありがとう。

じゃあ、ぼく、船に戻るね。」

そう言って、その子は、アルデバラン山の方へ走っていきました。

「船はそっちじゃないよ。シリウス号は反対だよ。」

「こっちなの-。」

その子の姿は、あっという間に見えなくなりました。

 

「大丈夫かな。」

「わからなくなったら、きっと戻ってくるよ。」

浜では「ベントラー、ベントラー」と叫び声が続いています。

その時、アルデバラン山の上に

丸い光がくるくると回って、上空にすーっと消えて行きました。